中性子グループ
目的
材料が水素を吸蔵することにより、材料の中の原子の配列(構造)は変化し、場合によっては規則的な構造から不規則な構造へと大きな構造変化が起きます。
したがって、水素貯蔵材料の構造変化や水素の位置を正確に測定することは、原子レベルでの水素貯蔵プロセスの基礎的な理解に不可欠であり、中性子はこうした研究において、とくに水素の位置の測定に威力を発揮します。
中性子グループでは、茨城県東海村で建設が進行している大強度陽子加速器計画(J-PARC、http://j-parc.jp/)のパルス中性子源に、水素貯蔵材料評価用の高強度全散乱装置(図1)を建設します。
中性子を材料に照射し、どのように中性子が材料により散乱されるかを調べることにより、原子の空間配置を明らかにできます。
この装置では、水素吸蔵過程における原子構造の高精度観測等を実現する計画です。
J-PARCという世界最高レベルの中性子線強度を有する施設に、最先端の機器やソフトウエアを開発・導入して装置を建設し、水素貯蔵材料おける先端基盤研究を展開します。
全散乱装置データより可視化された例(水素貯蔵アモルファス合金)が図3です。
アモルファス合金とは、原子の配列に周期性を持ちません。
赤玉が水素原子(重水素)を示しています。
左側の図は、鉄-テリビウム合金で、鉄原子(青)とテリビウム原子(黄)が分離(相分離)している一方で、右側の図はニッケル-テリビウム合金でニッケル原子(青)とテリビウム原子(黄)が均一に分布していることが分かります。
これにより、ニッケル-テリビウム合金の方が材料の耐久性が高いことが予想できます。
ちなみに、このような原子の分布の違いは、水素とテリビウムまたはニッケルとの親和性の違いにより生じることがわかっています。