水素貯蔵材料先端基盤研究事業

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PLあいさつ

写真:秋葉 悦男 2007年度にスタートした水素貯蔵材料先端基盤研究事業(HYDRO-STAR)は、前期の三年を終え、五年計画の後半である四年目を迎えました。

三年目であった昨年度夏には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業としての中間評価を受けました。 今年度以降は、そこで頂いた様々なアドバイスを建設的な方向で事業に取り組むように努力していく所存です。

中間評価では、HYDRO-STARでは世界的にも注目される成果を出しつつあるとの高い評価を得ました。 また、水素貯蔵材料容器への適用を想定した新規物質の可能性に関する研究は世界的に見てもトップクラスのものであるとの評価も頂いております。 さらに、本事業の特徴の一つでもある水素貯蔵材料を評価するために開発してきた種々の評価法や技術も世界をリードしていると認めて頂きました。

しかしながら、本事業の重要な観点の一つであるプロジェクト内部の連携による成果が見えにくいことと、 成果の発信を明確かつ早期に提示することを期待するとのご指摘も受けております。

これらのご指摘を真摯に受け止めた結果、2009年度限りで三機関が事業を去ることとなりました。 また、非金属系グループ中の計算科学チームを計算科学グループの強化のため事業内で異動いたしました。 更に、事業内の連携をさらに図るために、実験科学と計算科学で共通の材料系を対象としたより密接な協力関係の構築を本年度より開始しました。

第二の指摘事項である成果の発信については、指針をより骨太にするため材料に詳しい新メンバーを公募いたしました。 本年6月に材料物性グループと計算科学グループへ各一課題、計二課題が採択されました。 新しい仲間とともにHYDRO-STARは産業界へ高性能水素貯蔵材料の指針を提供するために努力していきたいと思っております。

HYDRO-STARの特徴であるSPring-8やJ-PARCのような大規模施設の高度かつ相補的な活用や国際共同研究については、更にその拡大と深化を図るように努める事としています。 昨年度にはSPring-8とJ-PARCのHYDRO-STARが係わる分光器に共通して使用できる高圧タイプの実験セルの製作に成功し、同一の条件下で放射光と中性子の実験ができるようになりました。 これは、今までの大規模施設間の協力としては、前例のほとんどない画期的なことです。 また、従来から進めて来ていた日米および日中の国際共同研究については、対象とするテーマと係わる機関を増やしていく計画です。

燃料電池自動車・水素供給インフラの事業化および大量生産に係わるシナリオの改訂が本年3月に行われました。 2025年時点における数値目標が示され、2015年の実用化開始後の年次展開についての具体的な展開を考えることができるようになりました。 水素貯蔵材料の基礎研究プロジェクトであるHYDRO-STARが進めるべき研究とそれからのアウトプットが時間軸を伴ってより明確になってきています。 その中で、HYDRO-STARも状況の変化に柔軟に対応しつつ計画を進めていきたいと考えております。

残された二年間では、中間評価でのご指摘にもあるように水素貯蔵材料実用化を目指している方々との連携を更に拡大し深め、HYDRO-STARの目的である「技術指針の提案」をすることに全力を尽くしたいと思います。

皆様の更なるご支援を心よりお願い申し上げます。

独立行政法人 産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 客員研究員
九州大学工学研究院機械工学部門 教授
同 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 WPI主任研究者

理学博士 秋葉 悦男

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